東京・東村山にある、豊島屋酒造という酒蔵を見学して来ました。
前編では豊島屋酒造の御神酒酒蔵としての歴史について解説しましたが、いよいよ本題の「本みりん」にフォーカスしていきましょう。
そもそも「本みりん」て、なにがどう違うの?
豊島屋酒造が造っている「本みりん」の現場をお見せする前に、「本みりんとはなんぞや?」というお話を知る必要があります。
スーパーの店頭で比較的安価で売られている「みりん」のラベルをよく見てみると、「みりん風調味料」と書いてあります。
この「本みりん」と「みりん風調味料」のふたつには、製造上で大きな違いがあるのです。
本みりんとは
もち米や米麹、醸造アルコール、水あめなどの糖類によって造られる醸造調味料のこと。
甲類という醸造アルコールを加えているため、アルコール分が13.5~14.4%含まれているため酒屋でしか販売できない。
酒類に属するので酒税が課せられているほか、製造に財務省が発行する免許が必要。
みりん風調味料とは
もち米や米麹、糖類によって造られる調味料。
アルコール分が1%未満で、甘味調味料に区分される。
国産米の原材料にこだわって醸造する、豊島屋酒造の本みりん
「本みりん」の製造現場を詳しく説明を交えて解説してくださったのは、豊島屋酒造の取締役・田中良彦さん。
ひととおり本みりんの製造工程についてお話を伺ったあと、醸造蔵へと案内いただきました。
最初に案内されたのは、みりんの元となるもち米やうるち米の洗米や蒸し米を行う場所です。
およそ100度まで過熱し、40分間蒸し上げます。
近代的な設備の中で、古くから使われる道具類もちらほら。歴史を感じさせます。
蒸して冷ました米は、施設内を管で渡して風力で一気に発酵蔵へと移送するそうです。
これは発酵蔵の2階の様子です。さきほどの管がほうろうタンクに連結されていました。
みりんも日本酒の醸造と同じ設備で作っているなんて、現場に足を運んでみないとわからないことです。
仕込み水には、地下から組み上げた富士山の伏流水を使用しているそうです。
東村山の地下にも富士山の伏流水が流れているなんて初耳でした。
仕込中の本みりんのもろみタンクも覗かせていただきました。この状態で60日間かけて発酵させるのだそうです。
初体験の味わい、本みりんの搾りたてを試飲
なんと,貴重な本みりんの搾りたてをテイスティングさせていただきました。
なにせアルコール度数は10度を超えていますから、お酒の風味も強いのですが、驚かされたのはその甘さ!
みりんを使って料理をする機会があっても、みりんだけを飲んだことはなかったので衝撃的なあじわいでした。
煮付けで醤油、酒、みりんに砂糖を加えている人は、このみりんだけでも充分よさそう。
写真は酒粕ならぬみりん粕。こちらも試食しましたが、麹独特の舌触りとお酒の香りが仄かにあります。
しかし、思ったよりもみりんの液体ほどの甘みはありません。
※見学で常時みりん粕が食べられるわけではありません
ここが凄い、豊島屋酒造の本みりん
前編でも紹介したとおり、豊島屋酒造では日本酒の製造のほか本みりんや焼酎、リキュールなどの製造免許も持っているそうです。
日本で現在、本みりんの製造免許は宝酒造やキッコーマンをはじめ30~40社ほどしかありません。
そのうちのひとつというだけも凄い話なのですが、豊島屋酒造では国産米のみ使用しているので甘みが違うのだとか。
一般的に流通している本みりんは、タイのインディカ米を使用していることが多いとのこと。
日本のお米は粘り気が強く、甘みがあるお米なのでこの味わいが醸せるのでしょう。
一度は外国産の米を使ってみたそうですが、米が固くて甘みが乏しいので使用をしないことを決めたといいます。
みりんの色なんて、普段はまじまじと見ることはないのですが・・・
改めてお猪口に注いでみると、トロリとした黄金色の液体の美しさにハッとさせられます。
我が家では、お正月にはお屠蘇をいただきますが、日本酒ではなくみりんを使用して作っています。
これまで意識せず買っていたみりんを使っていたのを恥じ入ってしまった位、今回の見学で価値観が一変しました。
次のお正月は、絶対に豊島屋酒造の本みりんを使ってお屠蘇を用意しようと固く決心したほど。
本物って凄いと改めて痛感させられました。
豊島屋酒造は、定期的に蔵の見学ツアーも行っています。
ご興味のある方は定期的にホームページをチェックしてみてください。
<取材・企画協力>
??豊島屋酒造
??Linkトラベラーズ