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高野山で宿坊に泊まってみました

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寺社にある宿泊施設・宿坊。神社仏閣巡りのガイド本の出版が相次ぐなか、数年前から宿坊の人気も高まりつつあります。

高野山の開創1200年というメモリアルイヤーにあたる2015年。高野山への旅行を思いたちましたが、せっかくなので宿坊へ泊まることにしたのです。

 

ご厄介になったのは加賀藩ゆかりの宿坊・天徳院

宿泊したのは天徳院という宿坊。天徳院は、加賀藩2代目藩主・前田利常の正室、珠姫の菩提寺です。そのため、門には加賀藩の家紋である剣梅鉢の御紋が入った提灯が下げられていました。
天徳院の見どころのひとつが、桃山時代に小堀遠州という作庭家によってつくられた庭園。当時のまま残された美しい日本庭園は、高野山でも唯一の重要文化財の庭園となっています。小堀遠州は二条城も手がけるなど優れた才能をもつほか、茶道家としても高名です。

書院造りの建物の内部は余計な装飾もなく、とてもシンプル。

鏡面仕上げのような、ピッカピカな床。お掃除が行き届いていてどこも清潔でした。

 

文化財の庭園の景観を独り占めしているようなお部屋

旅行カバンは玄関から部屋までご住職に運んでいただきました。お部屋に通された瞬間「うわー!」と歓声を挙げてしまうほど、窓からは絶景が見渡せました。

2階から見下ろす、池泉庭の庭園の素晴らしいこと!

絵画のような景観を独り占めです。初夏といえど、山頂にいますので窓を開けると涼しい風が吹き抜けて気持ちよかった…。

床の間には、身支度を整えるための鏡と香炉、小さいですがテレビもありました。襖の向こうには廊下を挟んですぐに他の宿泊者が滞在しており、テレビの音量は気をつけねばなりません。

宿泊に必要な歯ブラシやバスタオル、ハンドタオル、浴衣も用意されていました。部屋にはトイレ・風呂はありません。
なんだか人のお宅に泊りにきたような感じです。

 

食事の前にひとっ風呂・・・ なんと当日の女性客はひとりだけ!

「お風呂は夜の8時頃には済ませておいてくださいね」と言われたのですが、実はお風呂が大好きなタチ。旅館に来ると何度でも入ります。浴場へ続く廊下には入浴時間の札があり「午後10時まで」とありましたが、宿泊者は私と男性がもうひとりいるだけだそうで。今晩は早めに湯を落としてしまうのでしょう。抗わずに早い時間から20時までの時間に何度か入りに行くことにしました。

奥が女湯。こちらは内装をリフォームして日が浅いのでしょうか。どこも新しい感じがしました。

一歩入ると、こじんまりとした脱衣所・洗面所が。でも、洗面台も広くて使いやすい。椅子も和モダンでオシャレです。

脱衣所はプラカゴとラックのみ。床は吸水性のよいカーペットが敷かれていました。

明るい陽の光を感じながらの入浴って、それだけでも贅沢な気分になります。しかもこの日の利用者はひとりだけだなんて、贅沢すぎます・・・。熱めのお湯がとても心地良く、じんわりと温まりました。滞在中、都合3度も入浴してしまいました。

お風呂上がりには、冷たい飲み物が欲しいところ。館内には自販機も設置されているので買い出しも不要でした。ビールや発泡酒もあっていたせりつくせりです。
さらに徒歩5分程度の距離にファミリーマートが24時間営業していますから、不自由は一切ありません。

 

夜ごはんは当然、精進料理をいただきます

夜は18時半に御膳を運んでいただきました。高野豆腐を使ったお煮しめ、黒豆煮、そば、胡麻豆腐、茄子の田楽、酢の物、野菜の天ぷら、香の物、水菓子、吸い物にお櫃に入ったごはんという献立です。
どれも美味しくて、お櫃のごはんもたっぷり2膳半ありましたがすべて平らげてしまいました。写真には写り込んでいませんがビールも1本開けています。

特に天ぷらは絶妙な揚げ方で、揚げたてアツアツではないのにサックサク!ハッリハリ! 調理のコツをお伺いしたいものです。

 

朝は6時半からのお勤めに参加、そして朝ごはんも精進料理

朝は5時半に起きて、身支度を整えて本堂で行われる勤行にも参加してきました。
(本堂は撮影禁止ですので、写真はありません)

本堂には天徳院のご本尊である大日如来のほか、弘法大師像や不動明王、観音像などがお祀りされていました。このほかにも、加賀前田家代々の位牌も安置されているそうです。読経のあとは焼香までさせていただき、清らかな心持ちで本堂を退出しました。

そして朝ごはんも精進料理をいただきます。お献立は、インゲンの胡麻和え、がんもどき、切り干し大根煮、香の物、焼き海苔にお味噌汁とごはん。お水がよいのでしょうか、ごはんはピカピカでふっくらおいしかったです。入り口でチラリと山形県のはえぬきという袋を見てしまったのですが、普段食べているお米なんですよね…。何がちがうのでしょうか。

チェックアウトは10時ですが、ご住職は用事があって8時過ぎには出かけてしまうとのこと。お世話になったご挨拶をさせていただき、御朱印もしっかりと頂戴しました。

本当は朝8時前には天徳院をあとにして、高野山を夕方までまわる予定でしたが折しも梅雨の大雨。しかも地元の人も「これは降り方がちょっとおかしい」というほどの横殴りの豪雨で、しばらく部屋で途方にくれておりました。

それでも「奥の院はせっかくですから、行かれたほうがいいですよ」とご住職にも言われ、決死の覚悟で荷物を抱えて宿坊を後にしました。

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今回は初心者ということもあり、パッケージツアーを手配しました。そのため数多くある高野山の宿坊において天徳院を選んだ理由は「お風呂がステキだから泊まる!」「阿字観体験があるから泊まる!」といったものはありません。

でも、結果的に「こちらにお世話になってよかった」と思っています。なぜなら、商業チックなところが一切なくてお寺の一角にご厄介にあっていることをヒシヒシと感じながら滞在できたことにあります。

実は滞在中に何軒か、宿坊に力を入れていて24時間のお風呂やおみやげ物コーナーも設置している宿坊もお見かけしました。便利さは宿泊者にとって魅力のひとつですが、ホテルや旅館とはちがう宿坊らしさを味わいたいもの。
天徳院はそうした意味で、とてもいい滞在になりました。

2002年の日韓ワールドカップでは、諸外国からやってくるサポーターのために韓国政府が仏教寺院へ宿泊者を受け付けるなど対策を講じました。
日本では、寺社による宿泊施設の仕組みは歴史を遡ると平安時代から始まっていて、その歴史は1,000年を超えるのです。2020年の東京オリンピックでも宿泊施設の不足が問題視されていますが、都内の寺院が宿坊として開放されれば訪日外国人たちにとって、この上ない魅力的なコンテンツになるのではないでしょうか。

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